『夕暮れブランコ』

夕暮れ。ひとり、ブランコに座ってゆらゆらしてた。

「あそぼ。」
 その子は突然、私の目の前にやって来て、自分の足を
私の座ってるお尻の横にグイ、グイ、
右、左と置く。

 ブランコの二人乗り。一人は腰かけ、一人は立って。
友達と、ときどきやる。でも・・・・・・。

 その子は、だまって脚を
 かがんでは、のばし
 かがんでは、のばし。
 ブランコは、だんだんと大きくゆれてゆく。

 キコッキコ キコッキコ
 キコッ、キコ  キコッ、キコ
 キコッ。キコ・・・・・・

 ブランコは、どんどん大きくゆれてゆく。

 大きくゆれるブランコ。
 こわいけど楽しい。

 びゅぅぅぅ。びゅぅぅぅぅぅ。

 大きくゆれるブランコ。
 楽しくて、こわい。
 気持ち良くて、気持ち悪い。
 笑いたくて、泣きたい。

 空がだんだん蒼くなる。

「あそぼ。」
と言われてから、私はまだ一言も言葉を発していない。

 とめて。
 言おうとした。

「ヒック・・・」
 しゃくりあげる声。
 ポトッと落ちる涙。

 上から。

 見あげると、くしゃっとなった顔。
「グズッ・・・」
 鼻をすする音。
 かがんではのばしの脚がとまる。

 ブランコは、だんだぁんと、ぶぅらんぶらん。小さくゆれてゆく。

 キー キィィ
 キー キィィ
 キー
 キィィィ・・・

 ザザッ。と、私の足と地面が触れる。

 ブランコは、ふらついたまま。その子は、降りるとすぐ
私に背中を向けて、さっさと歩いていった。
 私が急いでその後を追うと、その子が立ち止まり、
私も止まった。

 何て言ったらいいんだろう。何か言いたかったけど。

 その子が、くるっと振り返った。
「だいじょうぶ?」
 そう言って、ヒッ と、しゃっくりをした。

 だいじょうぶ?
 浮かんだけど言えなかった言葉。私が、言われた。

「ヒッ。」
って、またしゃっくりが、かすかに鳴るもんだから。
「ふふふふ。」
 私は笑ってしまった。そして。
「だいじょうぶ。」
 そう答えた。

 ニッ。と笑ったその子が言った。

「あそぼ。」

 私。その子の名前、知ってた。

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